「でも、ほんとに吹っ切れるの、彼のこと？」「……。　難しいわね。　別れるとなって初めて……。　抜き差しのならないところまで踏みこんでたってことが、痛いほどわかったから」「さっきとずいぶん、言うことが違うじゃない」「もう、バレてもいいから」「何が？」「彼をどれだけ愛していたか。　いえ。　愛しているか。　今でも」「別れないってこと？」「別れるわよ。　永遠に。　この歳で捨てられて……。　残りの人生を、ひとり寂しく生きていくなんて御免だわ」「ぼくじゃダメってこと？」「とんでもない。　あなたは、素晴らしいパートナーよ。　最後の」「……」「効いてきた？」「な、なに……。　このシャンパン……」「わかった？　あなたは、わたしの最後のパートナー。　つまり、心中のお相手。　死んでしまおうとは思ったけど……。　わたしがひとりで死んだら、彼は酷く傷つくわ。　でも、わたしが男と心中すれば、彼も罪を感じなくて済む。　だって、完璧な心中ですもの。　わたしの部屋で、しかも2人とも裸。　さっき、あなたがわたしの顔に出した精液は…。　化粧直しする前に、たっぷりと下のお口にも押しこんでおいた。　情交の証拠もできた。　誰が見ても心中よ。　ふふ。　どう？　苦しい？　あんなに一気に飲むからよ。　ちゃんと苦しまないように配合したのに。　商売柄、植物毒には詳しいの。　入手ルートもあるし。　今日のは、一級品よ。　トリカブト。　植物界最高の猛毒。　葉っぱ1gで、人ひとり殺せるわ。　そんな目をしないで。　わたしもすぐに行くから。　グラスに塗ってあったのよ。　もちろん、両方のグラスに。　どちらのグラスを選んでも、ノーチャンス。　それじゃ……。　改めて乾杯。　2人の短い命と……。　地獄への長い旅に」由美と美弥子 3139 ＜目次＞ エロ本を拾った話