由美と美弥子 3152

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Mikiko’s Room
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2020-10-18 06:26:11
「この部屋の間取りと一緒だから、奥の和室よ。 何にもないがらんとした部屋に、箪笥が置いてあって……。 その上に、縦長の大きな箱。 吉崎さん、真っ直ぐその箱の前に立って……。 観音開きの扉を開いたの。 途中から予想できたことだけど……。 お仏壇だった。 木の匂いがするほど真新しいの。 中に、写真立てがあって……。 『主人です』って。 亡くなったの、2ヶ月前だって。 四十九日が終わったばっかり。 もちろん、すぐに手を合わさせてもらったんだけど……。 写真の中のご主人を見て、驚いちゃった。 『似てるでしょ?』って聞かれた。 考える間もなく、うなずいてた。 わかるでしょ? あなたにそっくりなのよ。 そっくりって言っても、瓜二つとか、そういう意味じゃないの。 顔は、ちゃんと見分けがつくのよ。 でもね。 なんていうか、雰囲気がそっくりなの。 しかも、顔だけじゃないんだって。 癌だったから、亡くなる前は痩せちゃったんだけど……。 元気だったころは、今のあなたと背格好も体型もそっくりだったって。 だから、2人で初めて挨拶に行ったとき……。 あなたを見てびっくりしたわけよ。 あの後、泣いたんだって。 神様は残酷なことをするって。 ま、そうよね。 亡くなったご主人とそっくりな男性が、隣に引っ越して来たんだから。 それも、他人の夫として」「ふーん。 よっぽど愛してたんだな」「羨ましい? あんな若い奥さんに愛されてて」「若いったって、もう子供は独立してるんだろ?」「出来なかったんだって。 子供。 不妊治療も考えたみたいなんだけど……。 自然に任そうってことになって。 でも、結局ダメで……。 10年くらい前に諦めたって言ってた。 でも、子供がいないせいか、逆にべったりの夫婦だったみたいなの。 ご主人は、10くらい年上で、吉崎さんも頼り切ってたらしいのよ」「いくつくらいなの、彼女?」「50前くらいじゃないの。 だから、亡くなったご主人は、あなたと同じ年代よ。 雰囲気から体型から年齢までいっしょなわけよ。 そりゃ、動揺するわよね。 お気の毒だし」「そういう人なら、仲良くしてやればいい。 子供がいない同士なんだし」「そうする。 ほっとけない感じがする人なのよ。 世間知らずのお嬢さんが、そのまま歳を重ねたみたいな。 お勤めも、1度もしたことないんだって」由美と美弥子 3151 <目次> エロ本を拾った話