由美と美弥子 3042

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 万里亜が指定したのは、週末の夜だった。 店が忙しい日なのではないかと思ったが……。 近隣のガス工事で、一両日、お湯が出ないのだそうだ。 シャワーも浴びられないから、休みにしたとのこと。 久々の連休だそうだ。 もっとも、エステスタジオの方は、今日の午後もやってくると言う。 そのバイタリティには、つくずく感服するしかなかった。 由美は、万里亜よりだいぶ早めに来ていた。 万里亜からは、乾杯したいから夕食は摂らないでいてと言われていた。 料理を用意しておいた方がいいかと思い、申し出たが、ピザだけ取っておいてほしいとの返答だった。 差し出がましくあれこれするより、素直に従った方が良いだろう。 それでも、ローストビーフだけは、冷蔵庫に寝かせておいた。 宅配のピザが届くのと入れ替わりのように、ドアホンが鳴った。 親機のテレビ画面には、万里亜がにっこりと笑っていた。 玄関の電気錠を、リモコンで解錠する。「どうぞ」「悪いけど、ドア、開けてくれる? 両手が塞がっちゃってるの」 慌てて玄関のたたきに降り、ドアを押し開ける。 両手に重そうな袋を提げた万里亜が立っていた。 美弥子は一瞬、挨拶の言葉も出なかった。 万里亜の格好が、思いがけないものだったからだ。 といっても、決して驚くような姿だったわけではない。 逆だ。 フェミニンな白のワンピースだった。 髪には、同色のカチューシャをつけていた。 最近、万里亜を見たのは……。 新店の舞台での、ヴェネツィアンマスクと股間のディルドゥを纏っただけの姿。 その前は、女教授との契約の場での、颯爽としたベージュのスーツ姿。 その前は、エステスタジオでのジャージ姿。 思えば、プライベートな格好の万里亜を見るのは、故郷で再会した喫茶店以来だった。「藤村さんも来てるみたいね」 万里亜の視線は、たたきに揃えられたスニーカーに注がれていた。 それが、美弥子の靴ではないことは、一目でわかるのだろう。 サイズだ。 美弥子は、由美の靴と自分の靴を並べるのが、何より嫌だった。 自分の靴の方が、2周りも大きいからだ。 このときも、自分の靴は、シューズボックスに仕舞ってあった。 背後から、軽やかなスリッパの音が聞こえた。 もちろん、小さなスニーカーの主、由美だった。 こんなに小柄で可愛く生まれていたら、どんなにいいだろうか……。 どこにいても目立つ、自らの大柄な身体を恨みたくもなる。由美と美弥子 3041 <目次> エロ本を拾った話
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