人間の業 ― 綺麗事の裏側 (別版):高価な目が海に落ちた夜
画像2枚
2026-09-23 20:00:00
人間の業 ― 綺麗事の裏側(別版)(前編)副題:高価な目は、視力を保証しない――鳥取沖、墜落と推定泥の中の覚醒――クルスクから北の大地へ、そして鳥取沖へ――――そして同じ秋の、2026年9月15日。青森・三沢を午前10時20分に飛び立った航空自衛隊の大型無人偵察機RQ-4Bグローバルホークが、午後0時55分以降に通信装置との接続不良を起こし、午後0時58分ごろ、鳥取県沖北約50キロの公海上でレーダーから消えた。海保と空自が浮遊物を確認し、航空幕僚監部は夜、「墜落と推定」と発表した。訓練ではない任務飛行。外部被害の情報はない。保有3機のうちの1機。配備後、初めての喪失である。高高度から長く見る機械は、見る側が目を開けている限り、目である。通信が切れ、機影が消え、海に落ちた瞬間、それはただの高価な残骸になる。空自はこれまで「高価」を繰り返し言ってきた。1機あたり約170億円(2019年時点)という数字は、その言い方を正当化する。だが値段は視力の保証ではない。米軍は2026年の対イラン作戦で、有人機だけでなく多数の無人機を失った。公開された損失表に並ぶのはMQ-9リーパーの大量喪失と、グローバルホークと同系統の高高度洋上監視機MQ-4Cトライトンの通信途絶・墜落である。2019年にはイランがRQ-4系を撃墜した実績もある。今回の鳥取沖が機械故障なのか、リンク途絶なのか、妨害なのかは、機体回収と通信履歴の分析を待つほかない。ただし「ジャミングで落ちた」と仮に結論づくなら、問題は機体の値段ではなく、電子戦の側にある。高くて見えない機械を、見えない相手の前に出すことになる。安達が見た紙切れは、フィクションの一行にすぎない。だが発表の夜に重ねると、意味が変わる。You are still blind.泥の中で生き残った者は、忠誠より先にセンサーとドローンの音を覚えた。正規軍の旗を持たない者たちは、痕跡を消すことを戦術の中心に置いた。こちらは高高度の目を一機失い、残る二機で「任務に支障が出ないよう態勢を確保する」と言う。高価を騒ぎ立てるうちに、性能と時代がずれていないか。答えはまだ、鳥取沖の海と、クルスクの泥の両方にある。人間の業 ― 綺麗事の裏側(別版)(後編)副題:「高額=高性能」という安全神話の崩壊1機あたり約170億円という途方もない数字は、国民や組織を安心させるための格好の言い訳だった。「これほど高価な最新兵器が落ちるはずがない」「世界最高の監視能力を備えているのだから大丈夫だ」――。しかし、その高額な値札は視力の保証でもなければ、撃墜や障害を防ぐ絶対の盾でもない。2026年9月、鳥取沖の冷たい海に沈んだRQ-4Bグローバルホークの影は、私たちが長年依存してきた「高額=高性能=絶対的勝利」という安全神話の醜い破綻を静かに宣告している。電子戦が主導権を握る現代の戦場において、数千万円の電磁波照射やサイバー攻撃の前には、100億円を超える巨額のシステムであっても一瞬でただの「高価な残骸」へと変貌する。どれほど高高度から広域を見渡せる「目」を持っていようとも、通信リンクを断たれ、電子の闇に叩き落とされれば、見えない相手の前に自ら無防備な姿を晒しているに過ぎない。泥と血に塗れたウクライナの戦場では、兵士たちが数万円の市販ドローンを現地で連日改修し、痕跡を消しながら泥臭く生き残る術を磨き続けている。一方で、カタログスペックと導入コストの高さに胡坐をかき、実戦的な脅威の変化から目を背けて「働いたフリ」を続けてきた組織は、いざという時にそのツケを支払わされることになる。「高く買えば安全だ」という思考停止こそが、最大の脆弱性である。高価なシステムを盲信し、運用の隙や現場の怠慢を覆い隠し続ける限り、次に失うのは機体だけにとどまらない。You are still blind. ――目を開けているつもりで、私たちはまだ何も見えていないのだ。



