由美と美弥子 3142

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     そして……。 気がついたときには、中段回し蹴りが女の脇腹に決まっていた。 女は、全身を“く”の字に曲げたまま横歩きし……。 園路を外れた芝生の上で転倒した。 仰向いた顔に意識が無いのは明らかだった。 そこに、女の名前を叫びながら現れたのが……。 封書の差出人、昭夫だった。 そうだ。 女の名前は、志津子。 その志津子が気づくまでの間……。 昭夫から、長い身の上話を聞くことになったのだ。 そうそう。 封書の表書きには「宮高昭夫」とある。 由美は、男の苗字を知らなかった。 聞いたのかも知れないが、覚えていなかった。 しかし、女の苗字は覚えていた。 宮高だった。 ということは……。 2人は結婚し、女の苗字を名乗ったというわけか。 事情はわからないが。 奇しくも由美は、結婚の申込みを間近で目撃したのだ。 気絶から目覚めた女に、男が裸で重なった。 公園の芝生の上で、全裸でまぐわいながら……。 2人は叫んだのだ。「志津子! もう出そうだ」「わ……。 わたしも一緒にイク!」「一緒に行こう。 これからどこまでも。 志津子。 結婚しよう!」「昭夫! 嬉しい!」 あのときの約束どおり、初老に近い男女は結婚したということだろう。 プロポーズの瞬間を目撃した者として……。 素直に嬉しかった。 しかし……。 今ごろ封書を送って来るとはどういうことだろう。 結婚式の招待状ではあり得ない。 こんなに厚いのだから。 由美は、嵩高い封書の手触りを改めて感じた。 この封書には、あの夏が詰まっているのかもしれない。 あの暑かった夏の夜が、夢のように蘇る。 由美は、ペン立てからペーパーナイフを取りあげると……。 封書のフラップの隙間に差し入れた。由美と美弥子 3141 <目次> エロ本を拾った話
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