由美と美弥子 3139

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Mikiko’s Room
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2020-09-30 05:59:55
男がダイニングテーブルに戻ると、もう新しいグラスが用意されていた。「シャンパン、開けてちょうだい。 ポンって飛ばして」「その開け方、マナー違反だそうだよ」「いいじゃない。 お店じゃないんだから。 クリスマスのとき、いつも父親がやってくれてたの。 子供のころ、1年で1番、わくわくするイベントだったわ」「天井にあたったら、傷が着くかも知れないよ」「いいわよ、どうせ石膏ボードなんだから」「それじゃ」 男は、シャンパンの頭を天井に向け、栓を少しずつ緩めた。 ポン! 派手な音とともに、コルクが天井を打った。 男は、コルクがあたったあたりのボードを確認したが……。 どうやら傷にはならなかったようだ。「ほら、零れちゃう」 女性は、自分のグラスを差し出した。 噴き零れるボトルネックを、グラスに傾ける。 男は、自分のグラスにもシャンパンを注いだ。「それじゃ、改めて乾杯ね」「何に乾杯する?」「考えて」「じゃあ……。 2人の前途に」「ほほ。 わたしにはもう、そんなに先はないわよ」「まだ、平均寿命まで30年もあるじゃない。 前途洋々だ」「そうね。 それじゃ、前途洋々な2人に……」「乾杯」「乾杯」 グラスのあたる音が軽やかに響き、テーブルが華やいだ。 男は、グラスのシャンパンを一気に飲み干した。 シャンパンを飲んだのは、いつ以来だろう。 東京の会社にいたころ、創立記念のパーティーで飲んで以来かも知れない。 空のグラスに、女性がシャンパンを注ぎ足す。 湧きあがる細かい気泡のように、男の心も浮き立っていた。 あの男と別れるのなら……。 もうこの女性は自分だけのものになるのだ。 そうだ。 もしだったら、一緒に住んでもいい。由美と美弥子 3138 <目次> エロ本を拾った話