人間の業 ― 綺麗事の裏側 第130話:【連載】知っておきたい認知症のコト 第30回
画像2枚
2026-11-07 20:00:00
人間の業 ― 綺麗事の裏側 第130話副題:物忘れと認知症の違い――「年相応の物忘れ」と「病気としての認知症」を見極める「人の名前がすぐに出てこなくなった」「昨日食べた夕飯のメニューが思い出せない」「メガネをどこに置いたか忘れて家中を探すのが『物忘れ』。メガネを探していること自体を忘れ、手元にあるメガネを見て『これ誰の?』となるのが『認知症』です。日常生活の中では、この『抜け落ち方の深さ』に決定的な違いがあらわれます。」歳を重ねるにつれて、このような「物忘れ」を自覚する機会が増え、「もしかして認知症が始まったのでは…?」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。認知症のケアにおいて、早期発見と適切なアプローチは非常に重要です。しかし同時に、加齢による自然な「物忘れ」と、脳の病気によって起こる「認知症」を正しく区別して捉えることも大切です。連載第30回となる今回は、加齢による物忘れと認知症の違い、そして見極めのポイントについて解説します。1. 「忘れ方」の決定的な違い加齢による物忘れと認知症による記憶障害は、同じ「忘れる」という現象に見えても、その背景にある脳のメカニズムが大きく異なります。最大のポイントは、「体験の一部」を忘れているのか、「体験の丸ごと(全体)」を忘れているのかという点です。加齢による物忘れは、記憶を引き出す引き出しが開けにくくなっている状態(思い出しにくさ)です。そのため、「昨日の夕飯、お魚じゃなかった?」とヒントを出されると「そうだった!」と思い出すことができます。一方、認知症の場合は、記憶を留めておく「引き出し」そのものが消失してしまう状態です。そのため、ヒントを出されても「そんな出来事はなかった」と感じてしまいます。2. 日常生活で見られる具体的な変化のサイン記憶の忘れ方以外にも、日常のちょっとした仕草や言動の変化にサインが表れることがあります。〇 物の管理と探しもの加齢: どこに置いたか忘れて探すが、「自分が置き忘れた」と認識している。認知症: 探しものが見つからないとき、「誰かに盗まれた」と思い込む(物取られ妄想)。〇 約束やスケジュールの管理加齢: 約束したこと自体は覚えており、「何時だったか」をメモで確認する。認知症: 約束したこと自体を忘れてしまい、すっぽかしたことにも気づかない。〇 買い物の変化加齢: 買うべきものを買い忘れる。認知症: 同じ商品を何度も買ってしまい、冷蔵庫の中に同じ食材が大量に溜まる。〇 感情や意欲の変化加齢: 趣味や活動に対する興味や関心は維持されている。認知症: これまで好きだった趣味に急に関心を示さなくなったり、億劫がったりする(アパシー/感情の平坦化)。3. 「あれ?おかしいな」と感じたら「もしかしたら認知症かも」と感じたとき、一番やってはいけないのはご本人を問い詰めたり、間違いを強く指摘したりすることです。認知症の初期段階では、ご本人自身も「今までできていたことがうまくできない」という強い不安や葛藤を感じています。周囲から「さっきも言ったでしょ」「どうして忘れるの」と叱責されると、プライドが傷つき、自尊心を失って不安や怒りが増幅してしまいます。接し方と対応のステップ不安な気持ちを受け止める「忘れやすくなって不安だよね」と共感し、否定せずに耳を傾けます。さりげなくメモやカレンダーを活用する視覚的に確認できるメモを共有の場所に置くなど、生活環境を整えます。早期に専門医療機関へ相談する物忘れの原因は認知症だけでなく、甲状腺機能低下症や脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、ビタミン欠乏症など、治療によって改善する「治る物忘れ」である場合もあります。気になる症状が続く場合は、かかりつけ医や「地域包括支援センター」、精神科・神経内科・メモリークリニック(物忘れ外来)などの専門機関に相談してみましょう。おわりに物忘れが増えてくると、ご本人もご家族も焦りや不安を感じやすくなります。しかし、正しく違いを知っておくことで、「これは加齢による自然な変化だな」「ここは少し様子を見て相談してみよう」と冷静に判断できるようになります。変化を恐れすぎず、早期の気づきと温かいアプローチで、安心して暮らせる環境を整えていきましょう。>この話が気に入ったら、ランキングバナーをポチッと押していただけると励みになります。



