知佳の美貌録「煙の向こうのSOS」

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人妻・熟女の不倫実話と創作官能小説 | 知佳の美貌録 1view
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    知佳の美貌録副題:〜薬毒に揺れる視界と、閉ざされた病室の現実〜ジプレキサの筋肉注射を施す代わりに、主治医は久美の投薬をより強力な向精神薬へと切り替えた。診察に出向かなくても命じておけば看護師が処置できるからだ。この新しい薬は、投薬初期こそ目覚ましい効果を見せるものの、薬の性質上日を追うごとに徐々にその効力を失っていく。病室の窓から外の風景を穏やかに楽しむことができるのは、薬が「程よく」効いている、ほんのわずかな時間だけだった。ある日のこと。いつものように窓辺で身を寄せ合う鳩を眺めていた久美が、飛び去る鳩の姿を追いかけ遠くに視線を投げかけた。人通りもまばらな早朝、民家の屋上に誰かが登っていくのが見えたという。その人物は屋上に着くやいなや、何かに火を放った。その様子からして思い余ってはなった風に見えたという。だが、放った本人が炎から逃れようと屋上でじたばたしていた。たまたま通りかかった自転車の男性もそれに気づくが、パニックを起こして右往左往している。定期巡回に来た看護師に、久美はその光景をそのまま語った。けれど看護師は、いつものように彼女が孤独を紛らわせるために作った空想の物語だろうと高をくくり、取り合わなかった。だが、処置を終えた看護師がふと視線を窓の外へ移した瞬間、表情が凍りついた。本当に黒煙が上がり、家が燃え盛っていたのだ。消防署は目と鼻の先にあるというのに、一向にサイレンの音が聞こえて来ない。ナースステーションは突如として騒然となる。結局、看護師が消火要請を行った。「あのね、久美さん。今度から火事を見つけたら、いつでもいいから教えてくださいね」そう言われても、久美にとってナースコールを押すのは容易なことではなかった。激しい気分不良や、耐え難いほどの頭痛に襲われてコールを鳴らしても、やってくる看護師はいつも不機嫌な態度を隠さなかったからだ。薬が切り替わるたび、久美の視界には激しい幻覚が現れるようになっていた。しかし、その苦痛を看護師に伝えることすらためらわれた。こうなると医療従事者の目には、症状が安定したと映る。「薬がうまく効いている」としか捉えられていなかったのだ。そのまま三ヶ月が過ぎようとする頃、形式ばかりの簡単なリハビリが始まり、そして何の前触れもなく退院が宣告された。家族の誰ひとりとして入院書類にサインすらしてくれない自宅へと、彼女を強引に追い返そうとする病院側。どれほど懇願しても、転院先の病院を探してくれようとはしなかった。見かねた知佳は、かつて自分が勤務していたもうひとつの総合病院へ久美を、外出許可を取り連れて行った。惨状を直接訴えるために。診察室に入るなり、久美の身体をいつもの痙攣発作が襲った。例の、スポーツマンが渾身の力を振り絞り腹筋運動を繰り返す、あれだ。共に救急外来勤務をこなした医師に向かって、これまでの経緯と現状を伝えると彼は、即座にペンを取り、医大の担当医へ宛てて抗議のファックス書き送信、電話で直接抗議してくれた。そこには厳しい口調でこう記されていた。——このような状態で患者を放り出すのは誠に無責任である。患者の命を守るのが医師の務めであり、そちらで責任を持って面倒を見るように。この要請により、一時的ではあるものの久美は救急車で再び医大へと搬送され、再入院を果たした。やがて症状が一度落ち着いたところを見計らい、彼女はリハビリ病院へと転院させられた。しかし、そこは名目上は脳外科医が在籍しているものの、高次脳機能障害を専門的に診る技術も知見も持たない名ばかりのリハビリ病院だった。糖尿病患者ばかりで固められた大部屋の隅っこにぽつんとひとり、高次脳機能障害の久美のベッドが配置された。担当医は何日経っても診察に訪れず、時折近くを通りかかり、廊下からチラリと部屋の様子を見ては、「うん、大丈夫そうだ」の一言で済ませて去っていった。大学病院同様、時折久美は激しい発作に襲われたがその際も、その医師は自ら処置を施そうとはせず、ただ看護師たちに向かって冷たくこう命じるだけだった。「押さえておけ」(煙の向こうのSOS 完)>※完全オリジナル作品です。二次創作ではありません。この話が気に入ったら、ランキングバナーをポチッと押していただけると励みになります。
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