人間の業 ― 綺麗事の裏側 第45話:歪む白衣 ―― 密室の不徳、残された者の復讐と執念 ――

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人妻・熟女の不倫実話と創作官能小説 | 知佳の美貌録 0view
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    人間の業 ― 綺麗事の裏側 第45話(前編)副題:夜が更ける前に朝食の席で、久美は唐突に語り始めた。それは彼女自身が「松本清張の短編小説にある話だ」と頑なに言い張る、ひとつの凄惨な復讐劇の物語であった。交通事故で一人息子を不運にも亡くした一人の母親がいた。通学途中、少年は車に跳ねられて重傷を負った。現場に駆けつけた救急隊は、すぐ近隣にある総合病院へ受け入れの緊急連絡を入れた。電話に出たのは、その病院の理事長であり当直医の妻でもある女性であった。彼女は救急要請を淡々と受け付けた。しかし、当直医である夫は、その時あろうことか看護師と診察室で不適切な行為の真っ最中であった。なだれ込んできた救急隊を、医師は冷酷にも追い返したのだ。妻は夫の不貞を知りながら、あえて要請を受けていたのであった。断られた救急隊は急ぎ別の病院を探し出して搬送したものの、検査室へ向かう廊下で、少年は息を引き取った。息子の死に深い疑念を抱いた母親は救急隊員に詰め寄り、搬送拒否の非道な経緯を知る。そして母親は、冷酷な復讐を静かに誓ったのだった。最初に狙われたのは、急患を追い返した当直医であった。母親はある男の協力を仰ぎ、色仕掛けで医師を密室へと誘い出した。飲み物に強力な睡眠薬を混入させ、寝入った隙に手首を切開する。さらに洗面台へ温かい湯を流し、傷口を浸させた。温められたことで血潮は止まることなく流れ続け、医師は絶命した。次に狙われたのは、搬送先で首を宣告されたあの看護師と密かに逢瀬を重ねていた別の医師であった。暗い公園で待ち合わせていた医師を襲い、後ろ手に縛り上げて口内に布切れを押し込む。そして鋭利な刃物で胸を一突きにし、死にゆく様を冷たく見届けた。警察は、遺体の手首に残された緊縛痕と、口腔内に残された糸くずを手懸かりに捜査を開始する――。久美が熱っぽく語るそのフィクションの裏には、彼女自身の身に起きた、あまりにも皮肉で凄惨な現実が横たわっていた。ある日の昼下がり。近所の郵便局で用事を済ませたある女性が、自転車に乗って道路を渡ろうとした瞬間、走行してきた乗用車と衝突した。女性は路上へ激しく叩きつけられ、路上に倒れ込んだ。すぐに救急隊が要請された。たまたま現場近くのコンビニエンスストアの駐車場には、久美の長女である美里が、例の補導員の男と車内で密会していた。野次馬のように事故現場へ近づいた補導員に対し、倒れた女性は「大丈夫」と気丈に声を残し、救急車へと運び込まれた。離婚して故郷へ戻り、「これから頑張る」と同窓会で誓ったばかりの女性であった。だが、搬送先の総合病院で検査室に向かう途中、容態が急変し、彼女は二度と帰らぬ人となった。目と鼻の先に大きな総合病院が存在する環境でありながら、なぜ命が救われなかったのか。後に美里は、事故の後遺症を抱える久美に向かって、冷淡に言い放った。「頭から路上に叩きつけられて開頭手術を受けたあんたが生き残り、自分で『大丈夫』と言い切ったあの人が死ぬなんて……本当に皮肉なものだね」美里のその冷酷な言葉を、久美はその後、何度も呪文のように繰り返すこととなった。「私は、三途の川を渡ろうとして追い返されたんだ」と。さらに久美の心を深く歪ませたのは、自身が入院中に直面した医療機関からの理不尽な打ち切りであった。どのような症状であっても「三か月を超える入院は認めない」という画一的な病院側の都合。患者の回復よりも制度や経営を優先する冷たい姿勢に触れ、久美の心はすっかりひねくれ、頑なになってしまったのだ。今や、病院や医師の話題になるだけで、久美は激高し、抑えきれない憤りを露わにする。綺麗事の医療の裏側でうごめく人間の冷淡さと、生と死の不条理。彼女が語る清張風の復讐劇は、そうした現実の理不尽に対する、彼女なりの哀しい抵抗の叫びなのかもしれなかった――。(45話 後編に続く)人間の業 ― 綺麗事の裏側 第45話(後編)副題:事故の後遺症による言動朝食の席で物語を語り終えた久美は、湯気の立つ茶碗をゆっくりと置き、窓の外を静かに見つめた。その目はどこか遠くを見つめているようで、熱を帯びた語りの濃密な余韻が、まだ室内に重く残っていた。「……清張なら、きっとこう書くはずよ」彼女はそう低く呟き、自らが構築した物語の正当性を補強するように言葉を続けた。警察は、二つの遺体に共通して残されていた手がかりを必死に繋ぎ合わせた。手首に残された明確な緊縛痕、そして口腔内に残された微細な繊維。捜査線は徐々に、一人息子を不運にも失った母親へと収束していく。だが、彼女の行動はあまりにも巧妙であり、感情の起伏をほとんど表に出さなかった。捜査員が自宅を訪ねても、静かな声で「息子はもう帰ってこない」とだけ繰り返し、それ以上の真実は一切語ろうとしない。やがて、その母親はある夜、自宅の居間でひっそりと静かに息を引き取った。机の上には、愛する息子の遺影と、一通の短い手紙が遺されていた。『これで、ようやく同じ側に立てた』――言葉はそれだけであった。久美はそこで語りを止め、自らの左手の甲を無意識になぞった。事故の後遺症として刻まれた小さな瘢痕が、朝の柔らかな光に白く浮き上がっている。「あの女は、三途の川を渡る途中で追い返されたのよ。私がそうであったようにね」彼女の声は、突如として低く、刺々しい響きを帯びた。病院や医療の話題に触れると、彼女の精神はいつもこうして不穏に波立つ。どのような深刻な症状であれ、三か月を超える入院は一切認めない――あの画一的で冷酷な言葉が、今も彼女の耳の奥で嫌悪とともに反響するのだ。患者の回復の兆しよりも、制度やベッドの回転率という経営が優先される白い世界。医師たちの白い衣の下に隠された、身勝手な都合と冷淡さ。「綺麗事ばかり並べて、結局は自分たちが楽な方を選ぶ。救急搬送も、治療も、全部がそうなのよ」久美は箸を置き、テーブルを激しく叩くように強く言った。同席する家族は、ただ黙ってその言葉を聞いている。下手に反論すれば、彼女の激高がさらに加速することを、痛いほど知っているからであった。美里がかつて放った冷酷な言葉を、久美は今でも怨念の呪文のように繰り返す。「頭から道路に叩きつけられて開頭手術を受けた私が生き残り、自分で大丈夫と言い切ったあの人が死ぬなんて……本当に皮肉なものだね」その言葉は、彼女の歪んだ精神の中で徐々に形を変え、復讐劇を描いた母親の凄惨な心情と完全に重なり合っていった。「私は向こう側から追い返された。 だから、向こう側に残された人たちの代わりに、こっち側でずっと怒り続けているのよ」窓の外では、近所にある総合病院の白い建物が、朝日に照らされて淡く輝いていた。久美の視線は、その建物を射抜くように鋭く捉えたまま動かない。人間の業は、綺麗事のすぐ裏側で静かに、しかし確実に蓄積されていくのだ。彼女が語る清張風の物語は、決して単なる作り話ではなかった。事故の後遺症が残した心の深い歪みと、医療現場で味わった理不尽な現実が、彼女の中で一つの業の物語を紡ぎ出していたのである。朝食は、もはやほとんど進まなくなっていた。久美は再び、ゆっくりと口を開く。今度は、あの母親が最後に残した手紙の続きを、自分自身の呪詛の言葉で紡ぎながら――。(第45話 了)>※完全オリジナル作品です。二次創作ではありません。#人間の業 #歴史の循環 #心理小説 #綺麗事の裏側この話が気に入ったら、ランキングバナーをいただけると励みになります。
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