川越え

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人妻・熟女の不倫実話と創作官能小説専門ブログ 元ヤン知佳の美貌録 2view
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      中山峠(なかやまたわ)の頂上に立って佐吉は驚嘆してしまった。 お城を守るどころか城下に通ずる街道を獣道を代用するなど通せんぼし、隠ぺい工作を謀ったはずなのに、肝心の屏風役の木立がほぼ消え失せ、直線距離にしておおよそ二里半離れていようこの地から連なる峰々の間を縫って月山が、攻め手となろう裏手の峰々までが、まるで手に取るように見渡せる。「--- そうか…… いや、そうに違いない。 彼奴等、東比田側からではこうまで富田城の内が見通せないものだから、対岸のこの峠上でなら軍略も立てやすかろうと、尼子方に槍を向けてでも峠に登ろうと、か……」 小早川方の素っ破(すっぱ)に身をやつした佐吉こと新宮又兵衛は、御館様である尼子経久に隠密を命じられてのことであろうからと、川越の場所を中山街道を出てすぐの大川と決めていた。 合流地点は流れは急ではあるが腰まで水に浸かれば渡れないこともない。 当然対岸に伏兵がいるであろうが、身分を明かせば後ろ手に縛られ城内に引っ張り込まれることはあっても、その場で首をはねられることはあるまいと、安易に考えていた。 下薬研に着くと早速、一軒の百姓家に立ち寄り使いを頼んだ。 城下に立ち入るには身なりを整えなければならない。 髪を結いなおし髭をあたり、裃を着ないことには武士とみなされない。「ついでにな、身は安物でよいから柄から先は見事な大小をな」挨拶に出てきたこの家の主と思える男に、例はたんとするから城下でそれらを揃えて来てくれまいかと申し出てみた。「へい、お安い御用で。 上がって茶でも飲んで待ってておくんなさい」最初に顔を合わせたときは関所役人ほどではないにしろ、それなりに煙たそうな顔をした。 それが「実はな亭主、ここだけの話しだが、拙者新宮又兵衛と申す」もろ肌脱いで鍛え抜かれた胸板を見せ、こう名乗った途端表情が一変し、へこへこと頭を下げ始め、出かける用意をし始めた。 尼子で新宮といえば代々、新宮谷集落の誰かがと決まって家老を務めると、暗に決まっている家柄。 剣術もそうなら頭脳明晰さも、まさに尼子家最強の軍団だった。 とりわけ山中鹿之助は有名で、小童のような小兵でありながら軍略に長け、しかも6尺豊かな武者と偽り、今では尼子の運命を左右する家老でありながら軍師であり軍神に成り上がっている。 経久以上に人々の裏をかき、人を人とも思わない戦い方をする若武者。 この地で生き永らえようとするなら、触らぬほうが良い、民百姓にとって祟り神であった。「それではちょっくら……」商売道具の薬箱を背負うと男は、女房独り家に残し城下に向かって出かけて……。 が、ひと山越えるともと来た道とはまた別の道を辿って足早に戻ってきて、本谷とは別の谷に入り込み、棚田の小さな納屋に入り込み、薄暗い中で何やらごそごそ探し回ったあと、家の裏山に引き返してきて息を殺し家中の様子を覗った。 家の中では素っ破(すっぱ)の佐吉改め新宮又兵衛が、留守を言いつかった女房によって懸命にもてなされていた。 酒肴はもちろんのこと、大いに呑み喰らい疲れた又兵衛の足腰を、襦袢一枚になった女房が覆いかぶさるようにしながら揉み解していた。 この時代、かつての獣道とは違い街道を行き交うとはいえ夜盗も跋扈する不便極まりない道中、昼間であってもそれなりに気を使い神経をすり減らす。 神経が野生化するとどうしてもその反動と言おうか人肌が恋しくなる。 それゆえ女房殿の施術で堕ちなかった旅人はいなかったそうだが、いかに儲けとはいえ亭主としてもひとりの漢としてもこればかりは気が気じゃなかった。 しかしその一方で、下薬研も人口減少問題は避けて通れなかった。 誰の子であれ、それで妻が喜び産む気になってくれたなら、この地に居座る気になってくれたなら、自分も頑張って子育てにいそしむのでもよいので産んでほしい。 いつのころからかそう思うことにした。 隠れ里のような山間の僻地にあって、城下のそれも新宮党の一角を担う侍の血を、女房殿が孕んだ子が受け継ぐとなれば育ての親だって大出世間違いない。 近親婚の弊害も消え失せようというのもであるからして真剣だった。 が、肝心の新宮又兵衛にその気はなかった。 あるのは、この家の主が如何にして川越を頼んだ品物を持って、あの見張りの厳しい川を渡って戻ってくるかであった。 毛利方が布部より上で川を渡ったということからも、よほどのつてでもない限り川越などできようはずもないと、川を渡り中山峠目掛け押し寄せ、要害山で覇を競ったことからできた布部の関所を見たとき、そして中山街道を下ってきたとき物陰からこちらに向け目を光らす伏兵に気が付いたとき思った。 仇やおろそかに川など渡れまいと、そう思えたが……。(なるほどのう……、素っ破・乱っ破か、御館様に命ぜられたときはなんで儂がと……が、やってみるものよのう……)両刀たばさみ、武士が川を渡るより、乞食が喰うに困り餓死覚悟で物乞うべく渡るほうが理にかなってるように思えた。(新宮を名乗る必要などなかったというわけか……)悔いたが、いまさらどうしようもない。 亭主が帰ってくるのを、家の中にいつまでも居続けたらその気になってくれてる女房殿に申し訳ないからと、元の姿に立ち戻り、付近を見回ってくると言い残し近くの山中に潜み待つことにした。 この家は近年になってこのような商売を始めたらしく、どことなく百姓っぽさが残っていたが、佐吉が隠れ住んだ小早川の領地ではこのようなことはさほど珍しいことではなかった。 陽が暮れるころになって道中に潜んでいた小者が夜番と交代できたのか引き上げてきて、佐吉ならぬ又兵衛の後釜としてこの家に入り込み、亭主に命じられその気になってる女房殿とおっぱじめてくれた。 亭主は、さすがに女房を慰み者にされたうえ銭も払わず帰られてはと、すごすご山から降りてきて小者がコトを済ませた気配に合わせ家の前に立った。 小者が立ち去るのを見送った佐吉は亭主の前に現れ、気持ちを紛らせてやろうと頼んだ品物を受け取るべく口を開いた。「たったあれだけの時間で、ようもこれだけの品を手に入れたものよ」感心してこういうと「なあに、あいつが何時か役立つだろうと頼み込み、譲ってもらっものを小屋にしまってただけですよ」 要害山の戦いで尼子方は負け、そこいらじゅうに屍を晒した。 その武将の亡骸を下薬研の百姓衆は城下の墓地まで隠れ潜んでみていた尼子方の上役に命ぜられ穢多の代わりに運ばされ墓堀りまでさせられた。 初七日が終わると小者は、いつか出世した折に使えるであろうと、墓を暴いて埋葬物を盗んだ。 が、尼子家の衰退に夢破れたのか隠しておいたそれをの代償に置いて行ったという。 亭主は、そうはいっても喰うに困るようになったら足軽装束の足しになりはすまいかと大事にしまっておいた。 学がないと言えばそれまでだが、それを出してきただけだといった。「川向うに亡骸を運ぶと言ったら、川を渡らせてくれるのだな?」「さようでさ。 あいつらも化けで出られてはあとあと始末が悪いとでも思うんでしょうよ」この亭主にしては投げやりな口ぶりだった。見なかったことにし、もしもバレたら信心深いことにし、渡してくれるという。 この言葉を信じ、亭主の案内でその武家の墓参りに出向く。 もしも問われたら亭主の申した通りの言い訳をすることにし、佐吉は新宮又兵衛然の身なりに整え、新宮谷は城安寺の新宮家菩提寺墓参の品々を携え福頼の堰を目指した。 危険と隣り合わせの川越であった。 又兵衛にしても心穏やかならざるものがあった。 下薬研の百姓家の玄関先に姿を現した、つい先ほどまで己を夫れ目的でもてなしてくれていた女房の、いかに又兵衛に心惹かれたとはいえ直後に休みに来た小者を送り出した後の、なんともはや言いようのない姿を拝んでしまった。 そのことで置き去りにし家を出た愛おしい妻に思いが至ったからだ。 亭主は、よほど又兵衛を気に入ってくれたのか。 女房殿が小者から受け取った駄賃をそっくり、川越え役人に袖の下として渡してくれた。 尼子家の命運をかけ川守をしているであろう役人さえもこのありさまであった。(--- あの噂は本当というわけか……)>
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