拐かし (かどわかし) 第十一話

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人妻・熟女の不倫実話と創作官能小説専門ブログ 元ヤン知佳の美貌録 13view
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     中秋の明月の夜、新次郎は五ツ (午後八時ころ) 過ぎに現れた。 その顔はうっすらと紅潮している。 いよいよ泊るという興奮はもとより、初めて経験する夜見世の賑わいに圧倒されたようだ。 昼見世の時間帯の吉原は閑散としているが、夜見世ともなると漢どもの女を抱きたくはやる熱気に満ち満ちていた。 大門をくぐると左手に面番所がある。 そこを過ぎると遊女が格子の内側に居並んだ張見世があり、大行灯がともされている。 一階の奥に居る楼主は夜見世の時刻が近づくと神棚に商売繁盛を願って拍子木を打ち、神棚の鈴をシャンシャンと鳴らす。 張見世の正面に座るのは上級女郎。 左右の脇の席に若い見習い女郎、新造たちが座り、楼主の拍子木を合図に清掻という三味線などによるお囃子が弾き鳴らされる。 若い衆である孫兵衛たちは清掻に合わせて紐でつるした木の下足札の束をリズムよくカランカランと鳴らし合いの手を入れる。 それが鳴り響いている間に、二階で化粧や着替えを済ませた花魁がすうっと障子を開いて部屋から出て来る。 上草履をぱたぁんぱたぁんと鳴らしながら、ゆったり階段を下りてくる。 張見世の前に多くの漢たちが群がり、熱心に格子の内側の遊女の品定めが始まっていた。 その熱気といおうか情景に、新次郎は煽られてしまっていた。「いらっしゃりませ。 花魁は首を長くして待っていますよ」 孫兵衛は愛想よく迎えながらも、内心焦っていた。 中秋の名月ということもあってか、客はごった返していた。 しかも、吉原妓楼 海老屋で今売り出しの小春の金蔓ともいうべき馴染み客が来ていたのだ。 孫兵衛にとって新次郎は待ちに待った客。 が、先に来ている金蔓は吉原妓楼 海老屋はもとより、小春にとってもこのご時世、大事な客なのだ。 新次郎は土間に草履を脱ぎ、板の間に上がった。 草履はすばやく、孫兵衛が下駄箱にしまった。 孫兵衛は新次郎を伴って二階に上がり、小さな小部屋に通した。「まずは、こちらで」 すぐに小春の部屋に案内されるとでも思っていたのか、新次郎は心外そうな顔をしている。 禿が茶と煙草盆を持参した。 続いて酒と、簡単な肴をのせた硯蓋が運び込まれた。 孫兵衛が銚子を取り、酌をした。「あいにく、花魁は廻しを取っていましてね。 しばらく、ご辛抱を」 廻しとは、遊女が複数の客を取ることである。 この日の夜小春には三人の客がついていた。 これまで新次郎は昼見世しか知らないため、廻しというものには慣れていない。 いかにも不満そうだった。「廻しのときは、どうでもよい客を早目に済ませてしまい、最後に、惚れた客人のところに来るんですよ。『もう、どこにもいかない』ってわけでしてね。 待つのも、楽しみというやつで」孫兵衛は酌をしつつなだめた。 小春はいったんは顔を出したが、新次郎と盃を交わすとすぐに、出て行ってしまった。 他の客の相手をしなければならないのだ。 孫兵衛にしても、せめて新次郎につきっきりで世話をしたかったが、彼らの役目でもある二階廻しの仕事があるため、新次郎のところばかり腰を落ち着けるわけにはいかない。 けっきょく新次郎は独り、放っておかれることになった。>
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