由美と美弥子 3083

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     望遠鏡の角度は、登録した順番に自動でスイッチングできた。 テレビのチャンネルが自動で切り変わるようなものだ。 この望遠鏡版ザッピングをしながらの夕食が、1日で一番楽しいときだった。 そして、ある夜。 ついに、求めていたシーンが彼の前に現れた。 これまで、誰の姿も映ったことのない窓だった。 しかし、夜でも常にカーテンが開いているので、角度を登録してあった。 覗き男は慌てて、オートスイッチングを止めた。 窓際には、紫色のソファーが見える。 もちろんソファーは、こちらに背を向けている。 いつ見ても、これしか映らない部屋だった。 しかし、この日は違った。 女性が現れたのだ。 赤いバスローブを纏っていた。 覗き男の胸は高鳴った。 しかし……。 すぐに舌打ちが出た。 女性は、髪の水気を取っていたバスタオルをソファーに投げた。 女性の髪が露わになった。 白かったのだ。 総白髪ではなく、黒髪も覗くが、白い方が目立つ。 最近認知されてきた、グレイヘアというやつか。 しかし……。 覗き男にとっては、いわゆる“ババア”には違いない。 思い出の中の小学生が理想の男にとって……。 まったく妄想の埒外にある対象だった。 覗き男は、オートスイッチを再作動させようと、手を伸ばした。 グレイヘアの女が、窓際に立った。 顔が真っ直ぐにレンズを見た。 望遠鏡に気づいたのかと、一瞬どきりとした。 もちろん、そんなはずはない。 知った顔だった。 食材の買い出しに出る商店街で、毎日のように見ていた。 小綺麗な花屋のオーナーだった。 前面が総ガラス張りなので、覗かなくても中がよく見えた。 店員ではなく、オーナーだと思ったのはもちろん勘だ。 しかし、若い女店員に指図をする様子……。 店名が個人名を冠したものだったこと。 おそらく間違いないだろう。由美と美弥子 3082 <目次> エロ本を拾った話
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