コロナの影響で減ってしまったが、ここ数年は外国人の来客も爆発的に増えていた。印象的なのは、スーツケースを持った旅行者風の、とある白人カップルだ。　朝10時過ぎに、チェックアウトしたかと思ったら、数時間後、血相を変えて再びホテルに戻ってきたのだ。「サッキ、部屋に薬忘レタ！　高い薬！　スゴク高い！」　あまりにも焦っていたので、緊急事態のようだ。薬を忘れたってなら、命にかかわる事態かも…。「かしこまりました。只今確認いたします」　スグに清掃担当に電話を入れる。『ねえ、さっき清掃に入ってもらった４０１号室なんだけど、薬の忘れ物ってなかった？』『いや、ないですねー。あったら報告しますし』　ま、そりゃそうか。『でも、あの部屋、すげえ変な匂いしましたよ。めっちゃ臭かったし』　ふーん、白人の体臭でも、染み込んでたんかな？「申し訳ございません。部屋に忘れ物はなかったようです」　額に汗を浮かべて、白人男がまくし立てる。「オネガイシマス。部屋ヲ見サセテ！」　仕方ない。もし彼が旅行者だとして、必要な薬がなくなってしまったら大変だしな。　部屋の中で問題行動しないよう監視するため、私も動向することに。　部屋に入るやいなや、白人男はベッドに一目散。下を覗き込んで、裏側を確認した。　なにやらテープでとめてあったらしい茶色の小袋を取り出している。これが薬？「アリガト！　サンキュー！」　そう言って小走りで部屋を出る。　おいおい！　なんで大事な薬をあんなとこに隠しておくんだよ。もしや、危ない薬かなんかじゃねえのか…？　待てよ、清掃係も、変なニオイがしたって言ってたような…。　あの袋の中身、マリファナだろ！