由美と美弥子 3066

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     洗面所の手前には、美弥子の使う寝室がある。 もちろん、扉は閉ざされていた。 美弥子は歩を緩め、立ち止まった。 全身で聞き耳を立てる。 しかし、気配さえも感じられなかった。 ここにはいないのか……。 それとも、すでに寝入っているのか。 もちろん自分の部屋であるから、断らずに入っても咎められることはないはずだ。 しかし……。 ドアノブに手は伸びなかった。 とにかく、水を一杯飲んでからだ。 今の喉では、声も出ないだろう。 美弥子は裸足の足裏を忍ばせ、再び歩み出した。 裸足どころか、全裸だった。 万里亜たちに、着ているものを脱がされたことは覚えている。 しかし、さっき目が覚めたとき、周りに衣類は見あたらなかったのだ。 洗面所の洗濯機に運ばれているのかも知れない。 水を飲んだついでに、そこも覗いてみよう。 洗面所には、皎々と明かりが灯っていた。 しかし、誰の姿もない。 美弥子の衣類を洗濯機まで運んだ後……。 消し忘れたのだろうか。 美弥子は洗濯機に歩み寄り、蓋を開けた。 あった。 底の布地を拾いあげると、明らかに3人分の下着だった。 見回すと、美弥子のドレスを始め、万里亜や由美が着ていた衣類は、ランドリーワゴンに投げかけられていた。 美弥子は、棚から洗濯ネットを取りだし、下着類を詰めようとしたが……。 止めた。 夜中、素っ裸ですることでもない。 明日にしよう。 洗濯ネットを、洗濯槽の中で手放した。 しかし……。 下着から衣服から、すべてがここにあり、そしてその持ち主はどこにもいない。 ということは……。 持ち主は、裸のままということではないか。 いくらなんでも、美弥子の服を勝手に着ているとは考えにくい。 そして、裸の2人が同じ寝室にいるとしたら……。 美弥子は首を振った。 とにかく今は、水だ。 洗面台にあった歯磨き用の2つのコップは、ダイニングに持ち出されている。 しかし、両親のためのコップが、脇の棚に収納されていた。 美弥子はそれを取りだし、蛇口を捻った。 並々と注がれた水を見つめる。 この間、前面の鏡は直視していない。 たぶん、目蓋が腫れている。 美弥子は、目を瞑るようにして、コップの水を飲み干した。 夜中の冷えた水が、全身に染みこむ。 もう一杯。 蛇口を捻るとき、思い切って鏡を見た。 やはり、目蓋が腫れていた。 そして、隠しようもなく、不安そうな顔だった。 3人という関係には、難しい問題がある。 その中の2人が接近してしまうと、1人が外れてしまうのだ。 そして取り残されたひとりは……。 こんな顔になる。由美と美弥子 3065 <目次> エロ本を拾った話
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