「暖房、入れますね」「ちょっと強めにお願い。　冷え性なのよ。　もう、おばさんね」「そんな！　わたしたちと2つしか違わないじゃないですか」「由美ちゃん、女性の2年は大きいわよ。　大事に過ごしなさい」　美弥子はテーブルの2人の会話を聞きながら、エアコンのスイッチを入れ設定温度を上げた。　冷蔵庫から出したワインとグラスを3つ、トレイに載せる。　万里亜の持参したワインは、スクリューキャップではなく、コルク栓だった。　キッチンの引き出しから出したオープナーもトレイに追加した。　父がワインを飲むので、常備しているものだ。　キッチンで栓を抜いて行くべきか迷ったが……。　父の所作を見ていた限り、何だかコツが要りそうだった。　失敗が怖いので、開栓は万里亜に任せることにした。「すみません。　ワイン、冷蔵庫に入れちゃってて。　冷たくなってました」「いいのよ。　冷蔵庫に入れてたら、冷たくなるのはあたりまえ」「ははは」「由美ちゃん、笑い上戸ね。　陽気でいいお酒だわ」「万里亜さんは、なに上戸なんですか？」「どう見える？」「ぜんぜん変わらない」「ふふ。　ビール程度じゃね。　ワインが進めば、変わるかも」「えー。　万里亜さんが酔ったところ、見てみたい」「じゃ、せいぜいお酌してちょうだい」「はーい」「あの、万里亜さん、開けるのお任せしていいですか？」「あらあら。　よくオープナーなんかあったわね。　案外、飲酒常習者？」「上京した父が飲むので」「なるほど。　なんとなくわかる。　スクリューキャップのワインなんか飲めるかってタイプ？」「おっしゃるとおりです」「でも、これ、コルク栓だけど、オープナーは要らないのよ。　スパークリングだから」由美と美弥子 3050 ＜目次＞ エロ本を拾った話