「ともかく乾杯しましょ」「ワインにします？」「あら。　何のために、ビール買って来たのよ。　取りあえずのビールでしょ」「えー。　万里亜さん、オヤジっぽい」「ふふ。　仕事で毎日、オヤジたちとやり取りしてたからかしら。　内装業者の会話なんか、遠くで聞いてると、ほんとオヤジギャグばっかりよ。　ま、あれが仕事のリズムになってるんでしょうけどね」「そんなオヤジだったら、万里亜さん、誘われたりしなかったんですか？」「ぜんぜん。　山内さんの息がかかってる店だってこと、知ってる業者だから。　たぶん、愛人かなんかだと思ってたんじゃない？　わたしの前だと、直立不動なの。　ヒゲオヤジが」「へー、見たかったな」　2人の会話の間、美弥子はビールを用意していた。　350mlの缶を3本と、グラスを3つ、トレイに載せてテーブルまで運ぶ。「あら美弥子さん、グラスなんかいらないわよ。　缶のままでけっこう」「万里亜さん、ワイルド」「だって、家でいちいち、グラスになんか注いでられないでしょ。　冷蔵庫開けて、立ったままぐいーっと。　人生の醍醐味だわ。　はは。　ほんとに、オヤジね。　さ、プルトップ開けて。　未成年でも、家の中ならオッケー」「そうなんですか？」「だって、車の運転だって……。　公道じゃなきゃ、免許なくてもいいじゃない」「うそ」「ほんとよ。　だって、子供がレーシングカート乗ってるでしょ。　あれはレース場だから、乗ってもいいの」「へー。　でも、お酒は違う気がする」「いいじゃないの。　飲酒免許、わたしが許します」「わーい」　プルトップの開く音が、賑やかに重なった。由美と美弥子 3048 ＜目次＞ エロ本を拾った話