■「あります。　近くに。　会社で借りてるトランクルームです。　ランチの後に寄るつもりで、鍵を持って来てます」　OLは、制服のポケットから鍵を取り出して見せた。「でも、ほかの人が来ちゃうかも知れないじゃない？」「大丈夫です。　合鍵も持ってますから」　OLは、リングで繋がった鍵を振って見せた。　同じ形状の鍵が、2つ。　合鍵が一緒になっているのだ。　合鍵の意味がない。「近いの？」「すぐそこのビルです」「じゃ、行きましょう。　薫くん、前、仕舞って」　OLの後について歩き出す。　植えこみを外れるとすぐに、外の道路と繋がる開口部があった。　さっきのサラリーマンは、ここから入って来たのだ。　剣呑剣呑。　OLは、その開口部から道路に出ると、横断歩道を渡った。　そこはもう、ビルの連なるオフィス街だった。　ビルを2つ3つ通り過ぎた。「ここです」　OLが立ち止まったビルの入口には、よく見かける青い横看板が掛かっていた。　ビルごとトランクルームになっているらしい。　入口の扉の前で、OLはポケットから紐のついた名札を取り出した。　外出時は、名札を外しておくのだろう。　OLは、名札の中からカードを取り出した。　扉の脇に、カードの読み取り装置らしきものがあった。　OLは、その装置にカードを翳し、さらに暗証番号を打ちこんだ。　扉のロックが外れる音がした。　OLに続いて入ると、すでに両脇にドアの連なる通路だった。　そのドアひとつひとつが、区画されたトランクルームのようだ。　通路をしばらく進むと、脇に空間が開けた。　OLは、その空間に折れた。　そこはエレベーターホールだった。　ホールと云っても、ごく狭いものだが。由美と美弥子 3280 ＜目次＞ エロ本を拾った話