女、寂しさに負けたとき俺は「勝ち組」「負け組」という分け方には嫌悪感がある。人生、終わってみなければわからないし、本人がどう思うかは別だからである。女の生き方に関しても、家庭をもって子どもがいて仕事も順調、というステレオタイプが勝ち組であるとは、もう言えない時代に入っているようだ。雅美は、40歳を機に、一生独身で生きると決めたと言った。「結婚、出産をどうするのか」これは女たちの永遠の課題である。40歳になったとき「子どもはあきらめよう」と決めた。そうすると必然的に結婚する意味も見いだせなくなり、今に至っている。一生独身で生きると決めた女たちは、恋愛やセックスすら否定してしまうのだろうか？恋愛はしたい、いらない、セックスはしたい、いらない、それぞれの女たちの本音はどうだろうか。人生、いつどこで何が起こるかわからない。一生独身でいいと決めても、そうはならないかもしれない。ただ、40歳で「独身でいよう」と決めた女たちには興味と共感を覚える。俺たちは色んな場所で依頼を受けるが、彼女たちの特徴は、自宅での依頼が多い。最初から自宅に行く場合と、2～3回ラブホでの依頼を経て自宅になるケースもある。どちらにしても一人暮らし彼女たちは、何も気兼ねなく自由にできるのである。ラブホなどは非日常感を演出できるが、自宅は彼女たちの日常に入り込むことになる。どうしても最初のアウェー感は否めない。男は・・・努力で出来ている女は・・・我慢で出来ている40代、50代、60代独女たちは、誰もが苦労と我慢で出来ている。ひとりで生きていくと決めた女たちの決意と覚悟。その裏にあるひとりで生きていくことの生きづらさ。寂しさ、悲しみ、辛さ、困難をすべてを乗り越えて生きている姿は、いじらしく、艶っぽくて、可愛くて、いやらしい・・・いつしか俺は、苦労していない女には興奮しないようになった。ある50代独身女は男との接点が30年以上なかった。そのために、勇気を振り絞って、俺たちに依頼した。彼女は20歳代のときに憧れていた片想いの人と1度だけ関係をもった。そのときのことが忘れられずにいた。大きな男の手に触れられたときの、ドキッという胸の高鳴り・・・その感覚が頭を離れない。その後、他の男との縁はなかったわけではないが、あの強烈な体験は長年、脳裏に焼きついている。「私、まだ恋愛できるのかな」「手をつなぐってどんな感じだったかな？」「セックスできるのだろうか？」と悩む姿は、非常にリアルで切なくなる。そう思ってネットの海を漂っていると、女性用風俗にたどり着いたという。強さや加減に気をつけながら、手も深くは入れず、ゆっくり様子を見ながら触れていくと、目を瞑り、あのときのことを妄想しているようだった。最初は弱い刺激から与え相手がもっと欲しいもっと欲しいと思う状態を丁寧に重ねていく・・・女は、全てが終わると「まだ私でも大丈夫なんだと思った」とすっきりした笑顔でつぶやいた。『老後の楽しみが増えた』と言いながらその後も何度もリピートしてくれた。ずっと心の中に閉じ込めてきた性的な欲望を実現させたことで、自分の心と体とまっすぐに向き合うことができ。自分で縛っていた枷がようやく外れたような感覚だったのかもしれない。彼女たちの依頼は「悲しみを癒す」役割もある。「寂しいから呼んだの」「寂しいから一緒にいて」「寂しいからすぐ来て欲しい」「寂しい」という言葉は、彼女たちの根源的な感情といえるかもしれない。それほど彼女たちは、俺たちにこの言葉をよく漏らす。別の60代女は、母親が亡くなった喪失感から、連日依頼するようになった。彼女は、母親と死別して、ひとり身になって寂しいとつぶやいた。当時、年齢的には一回り以上うえだったが、そんなことはどうでもよかった。プレイよりも、心のケアをメインに行う。一緒にテレビを見たりして、家族のような穏やかな時間を過ごす。家族や友人を亡くした後に体験する悲しみや喪失感、罪悪感などの情緒的反応を「グリーフ（悲観）」と呼ぶらしい。グリーフ状態はいつかは終わる。しかし、その回復の過程においては、誰かと思いを共有することも大切なことである。そうした遺族の心の状態に寄り添い、回復のサポートを行うことをグリーフケアと呼ぶが、彼女にとって、女性用風俗は、そんな機能も果たしていたのだろう。非日常の安心感【お泊まりコース】を依頼されると、彼女の自宅に行き一緒にご飯を食べ、一緒にテレビを見、一緒にお風呂に入ってベッドで横になり、抱きしめて眠りにつく。ただ心を許しあった恋人同士のように過ごす。彼女の日常の中に俺が一緒にいる感じである。朝になると朝食をいただき『じゃあね』と仕事に出かけるようにして帰る。『いってきます』のキスも欠かさない。そんな中高年独女たちは、自宅で一晩を一緒に過ごす【お泊まりコース】を依頼する女も多い。当然ながら拘束時間が長いため利用料金は高くなるが、それでも長い時間一緒に過ごしたいという。彼女たちの依頼を受けて見えるのは「独身女の生きづらさ」である。何らかの「救い」を求めて、女性用風俗を利用しているということ。一人暮らし、仕事、老後の不安といったしがらみは、そう簡単に放り出すわけにはいかない。人間関係の不和や、不条理を抱えたまま、ひとりで生きていかざるお得ない。しかし、矛盾をひとりで抱え込む苦しみは耐えがたい。その穴を埋める何かが、ひと時でも救いをもたらしてくれる誰かが必要になる。性は人との触れ合いで始まり、触れ合いで終わる。「やさしく抱きくるんでくれる人肌のぬくもり」は、女の記憶の奥底で泣いている孤独な少女をやさしく泣きやませ、深い安心感で救ってあげる、たったひとつの手段である。心の疲れや重荷を取りのぞく、安らぎの愛である。そして、すべての女が知ることのできる最高の快楽の、第一歩でもある。愛する人と、身も心もひとつに溶けあうセックスは素敵なもの。女なら一度ならず抱く夢だろうが、それもそのはず。「目指しなさい、そこへ向かいなさい、大丈夫」という、本能にメッセージだからである。心の安定は「肌」に表れる女と男が求め合えば、肌と肌、皮膚と皮膚が必ず触れ合う。普段は何気なく自分自身を覆ってくれているわけだが、その外界と自分の境界は厚さ2mmもない皮膚である。外界の温度変化を感じて、その情報を神経を通じて脳に伝え、その情報を得た脳は命令を出し、汗をかかせたり、鳥肌を立たせるなどして、変化に対応する。また、内臓疾患など内部に異常がある場合も、肌荒れやブツブツができたりして異常を知らせる。それだけ皮膚は大切な情報を伝える器官だが、胎内に胎児が発声するときに脳と皮膚は外胚葉という同じ部位から発生している。発生的には脳と皮膚は一卵性双生児みたいなものということ。皮膚というのは、実は「身体を被う、薄く伸ばされた脳」だったのだ。だからこうした機能によって愛撫という肌の触れ合いに真価は発揮するのは当然のことで、皮膚がただ触れ合うだけで、様々な感情を呼び覚ましてくれる。つまり、皮膚と皮膚、肌と肌が触れ合うと、それは皮膚という仕切りがなくなり脳と一体となり、やがて互いが融合（溶けあうオーガズム）に至る。女は男の頼もしいカラダを実感し、男は女のやわらかなカラダを愛おしく感じるのである。心が折れそうなときは寂しさを埋めて欲しいし、勇気づけて欲しい。心を許せる誰かと触れ合いたい・・・それは当たり前の欲求である。俺たちは、そんな女たちの心と体の両方に寄り添い、そっと背中を押すような役割がある。近年、女性用風俗が増え続けているという事実は、それが苦悩する女たちにとって一種に「逃避行」として機能していること、生きづらい女たちを取り巻く環境がより厳しくなっていることもあぶり出しているのだろう。今、今日この瞬間も、女たちは俺たちと過ごすわずかな非日常のひと時で、身も心も脱ぎ捨てている。性欲も苦しみも、むき出しの『本当の私』になる。そして「私、まだ頑張れる」と自らをリセットし、再び日常という終わりのない戦いに戻ってゆく。“活況を呈する女性用風俗”それは、現代社会が女にとって逃げ場のない戦場であること、女たちが心身両面での救いを切実に求めていることの、残酷な証なのかもしれない・・・・非日常が日常を修復していく！非日常という刺激や楽しさがあるから現実の問題がより明確になることもある。社会や家族との関係はどうだろうか他人に惑わされていないか自分を大切にしているだろうか丁寧に生きているだろうか日常だけでは気づけない問いがある非日常を大切に・・・【人肌が恋しいとき！アラフォーからの独身女性の本当の性的欲求とは～その2～】へつづく