非日常が日常を修復する東京からやって来たドM変態主婦裕子の泊まり依頼で昼過ぎにホテルにチェックインしてからセックス三昧。朝までSMプレイを楽しんでからその足で未亡人良子の添い寝依頼に向かった。しばらくリビングで雑談してから、寝室に招き入れられた。部屋を見ると、その女の生き方が分かる。その女が選んだ家具や装飾品、読んでいる本や匂いまで、その人の鏡である。いろんな想像を頭に巡らせながら「しんどかったなぁ、ひとりで頑張って来たんやな」「身体も心もぐしゃぐしゃやん。力抜いてや・・・」と言いながら、背中をずっと撫でていた。良子は、一緒にいて添い寝して欲しいという依頼だが「自分がどうしていいのか」が分からず、無意識に体が硬っているのがわかる。良子は、無意識に、自分の欲や願望をないものにしてきたことや、本当は泣きたいけど、泣かなくしてきた自分がいたことを知った。「これまでに男に甘えたことある？」自分なりに周りに甘えたことを思い出しながら話していると、堰を切ったように急に涙が溢れ出した。その前からずっと泣くのを我慢していたようだった。「本当は辛かったんやな、泣きたかったんやな」そういうとさらに涙は止まらない。年齢を重ねた女は、知識、経験、生き抜く力、悩みごとや困難に対して我慢強くなる。苦労してきた女には色気がある。これまでの生き様が、切なくなるほど艶やかでいやらしい。「もういいよ、もう自分と戦わなくでのええんやで」きつく抱きしめながらつぶやいた・・・SMプレイ依頼の裕子と、添い寝依頼の良子。一見、真逆の依頼のようだが、透けて見えるのは「女の生きづらさ」である。女たちは何らかの「救い」を求めて、俺たちに依頼しているということ。『非日常』という刺激や楽しさがあるから現実の問題がより明確になる。パートナーや家族との関係はどうだろうか他人に惑わされていないだろうか自分を大切にしているだろうか丁寧に生きているだろうか日常だけでは気づけない問いがある。非日常を大切に・・・社会生活、結婚生活、育児、子育てといったしがらみは、そう簡単に放り出すわけにはいかない。人間関係の不和や、不条理を抱えたまま生きていかざるを得ない。しかし、矛盾をひとりで抱え込む苦しみは耐えがたい。その穴を埋める何かが、ひと時でも救いをもたらせてくれる誰かが必要になる。心が折れそうなときは寂しさを埋めて欲しいし、勇気づけて欲しい。心を許せる誰かと触れ合いたい・・・それは当たり前の欲求である。俺たちは、そんな女たちの心と体の両方に寄り添い、そっと背中を押すような役割を果たすことがある。人生に大きなストレスを与える時代男は女を大きく勘違いしている！女は自分を大きく間違えている！孤独の上に立っていることこそ、癒しを与え合える場所があるはず。“癒し”という言葉は抽象的な使われ方をしているが「いえる」という言葉の他動詞であり「なおる・よくなる」という意味である。恋人に「癒し」を求めるのは「よくしてもらいたい、なおしてもらいたい」といっていることと同義であり、他人にそういっていることになる。とどのつまりは「甘え」ているのである。女の“性”は男の衝動的に放出する生理現象の性とはメカニズムが異なり「甘え」という本能による部分が非常に強い。だから女のセックスは「癒し」に通ずるのである。だからといって「甘え」て許されるのは赤ちゃんだけ。赤ちゃんはミルクが欲しいときオムツを換えて欲しいとき、眠いときに「甘え」泣く。 「癒し」とは「甘え」ることまだ目も見えない乳⭐︎児がミルク欲しさに泣いたりするのは学習などではなく「本能」だからこそのもの。持って生まれた「甘え」という本能からくるものである。しかし子供のうちはその本能を、父母や祖父母にぶつけることができるが、不幸なことに、大人になるとその「甘え」という本能を十分に行使できなくなる。もっと不幸なことは、その本能を子供のうちに行使できないことだろう。甘えという本能が満たされないと、それはワガママへと転化してしまう。つまり、甘えとワガママは質が違うということ。「甘え」という本能は成長するにつけ異性に向けられる。でも、お腹が空いたから、汚れたパンツを取り換えて、と泣いたら、バカか非常識と思われるのが関の山。それこそワガママにしか映らない。ほんらいそれを許してくれるのは「恋人」や「夫」という存在だろう。甘えることができないと不満が募るのは、本能が満たされないから。他人といても、ひとりでいても「孤独感」があるときはまさにこの本能が満たされていないときなのだろう。そしてそんなときに、人は「癒し」を求め、癒されたいと思う。すなわち「癒し」とは「甘え」させてもらうことである。癒しとは結果、自己の開放であり解放！だからどんなにマニュアル通りのテクニック、刺激的な行為をしても、そこに解放が介在しなければ、喜びと悦びと歓びは成しえないないのである。このことを踏まえずに、女向けのサービスを謳うのは、お門違いもいいとこ。SMでも野外プレイでも輪姦プレイでもコスプレでも、自己の解放のための手段であり、目的ではないのである。淫乱になることも、変態が許されるのも、それを受け止めてくれる相手がいてこそのことである。壊れたいのに、泣きたいのに、甘えたいのに、相手がいない！女は、オーガズムを感じるから幸せなんじゃなく「相手を信頼して自我を手放すという体験」に幸福感があるのだ。そのためには、信頼できる人、さらけ出したい人を選ばなければならない。女性用風俗が、近年増えつづけているという事実は、それが苦悩する女にとって一種の「逃避行」として機能していること、生きづらい女たちを取り巻く環境がより厳しくなっていることをあぶり出している。今日この瞬間も、女たちは俺たちと過ごすわずかな非日常のひと時で、身も心も脱ぎ捨てている。性欲も苦しみも、むき出しの「本当の私」になる。そして「私は、まだ頑張れる」と自らをリセットし、再び日常という終わりのない戦いに戻ってゆく・・・それは、現代社会が女たちにとって逃げ場のない戦場であること、女たちが心身両面での救いを切実に求めていることの、残酷な証なのかもしれない。女が本当に欲しいのは、気持ちのいいセックスがしたい、イキたいとか表面的なことではない。気持ちいいを追いかける前に、泣ける場所がありますか？甘えられる相手がいますか？ということ。究極の解放の一番最初は「甘え」ることである！「寂しい思いしてきたんやな、辛かったな～」「でも、よく頑張ったぁ～、全部、ひとりで乗り越えてきたんやで！」心から他人に助けを、求めたことはなかった。甘えは負けと考えていた。常に、ひとりで耐え、自分を超えることが人生で、強き者だと思っていた。それらが間違いだと気づいたときに、本当の強さを知るのである。「もっと甘えてええねんで！」どんなことがあっても決して淫らな言葉など、口にしない、できないような良子は、ひとしきり泣いたあと、俺の胸に顔を埋め・・・小さな声で「いれて…」と囁いた・・・その甘くせつない声は、今でも耳から離れない。俺は、いつしか苦労してない女には興奮できんようになっていった（苦笑）自分を癒してあげていますか？