人間の業 ― 綺麗事の裏側 第35話:老いた獣の群れ

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人妻・熟女の不倫実話と創作官能小説 | 知佳の美貌録 1view
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    人間の業 ― 綺麗事の裏側 第35話(前編)副題:古希の檻に咲く、遅すぎた肉食「まあ、変わらないわねえ。本当に、あの頃のまんまじゃない」会場の隅で静かにウーロン茶を傾けていた真壁(まかべ)のもとへ、かすれた高い声が届いた。卒業以来、半世紀。七十歳という人生の節目に開かれた同窓会は、一見すれば、古希を迎えた旧友たちが旧交を温める、穏やかな集まりだった。白髪を整えた紳士、色鮮やかなスカーフで首元を彩る淑女たち。昔話に花を咲かせ、互いの健康や孫の成長を喜び合う光景は、どこから見ても品格ある老年の風景に映る。しかし、その穏やかな空気は、一人の男の存在によって静かに揺らぎ始める。真壁だった。学生時代からどこか浮世離れした美貌を持つ男だったが、七十歳を迎えた今も背筋は真っすぐに伸び、目元には知性を感じさせる皺が刻まれているだけだった。年齢相応の変化はあっても、不思議なほど品格を失わない。その洗練された佇まいは、自然と人の視線を引き寄せていた。「……私のこと、覚えてる?」最初に声を掛けたのは、学生時代は目立たない存在だった節子だった。少し腰をかがめ、遠慮がちな笑みを浮かべながら真壁の袖口にそっと指先を添える。その仕草には、少女だった頃の面影を懸命に重ねようとするような、不器用な切なさがにじんでいた。真壁は穏やかに微笑む。「もちろん覚えているよ、花垣さん」その一言が、静かだった空気を一変させた。それまで距離を保っていた女性たちの視線が、一斉に真壁へと集まる。「ちょっと節子さん、一人だけずるいじゃない。」「真壁くん! 私よ、小林! 覚えてるでしょう?」波が押し寄せるように、次々と女性たちが真壁を囲み始めた。香水の香りが重なり合い、昔話を装いながらも、それぞれが少しでも彼の近くへ行こうと肩を寄せ合う。「ねえ真壁くん、今はお一人なの?」「高校の頃、本当はずっと好きだったの。当時は言えなかったけれど……今なら言えるわ。」「昔より、もっと素敵になったわね。」長い年月を経てようやく口にできた言葉。青春時代には照れや世間体が邪魔をして飲み込んできた想いが、次々とこぼれ落ちていく。高齢になったから大胆になったのではない。半世紀もの間、理性の奥にしまい込まれていた感情が、人生の終盤を迎えた今、「もう隠さなくてもいい」という安堵とともに顔を覗かせただけなのだ。その熱は、若さゆえの衝動とは違う。積み重ねた時間が熟成させた執着であり、長年胸の底に沈めてきた欲望だった。真壁を囲む女性たちの熱気を、少し離れた場所から静かに眺める男がいた。幹事を務めた相沢である。相沢は、女性たちに囲まれながらも、どこか静かな眼差しを崩さない真壁を見つめ、ゆっくりとグラスを傾けた。そして、誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。「──さて。理性という蓋が外れた時、人は自分の欲望を飼い慣らせるのか。それとも、飲み込まれるのか……」相沢の口元に、わずかな笑みが浮かんだ。(後編へ続く)人間の業 ― 綺麗事の裏側 第35話(後編)副題:黄金の檻と、飼育員の不敵な笑み真壁の周囲は、いつの間にか小さな渦の中心になっていた。「ねえ、ちょっとこっちにも来てよ。昔の話、もっと聞かせて」「卒業式の日、本当は話しかけたかったの。結局、勇気が出なくて……」笑い声が重なり、会場の空気は先ほどまでの穏やかさを失っていく。節子は真壁の左側に立ち、小林は右側から身を乗り出す。誰もが「自分だけは特別だった」と確かめたいように、半世紀前の記憶を競うように語り始めた。だが、真壁は相変わらず穏やかな微笑みを崩さない。その落ち着きが、かえって彼女たちの感情を刺激していた。「真壁さん、今は本当にお一人なの?」「もし独身なら……今からでも遅くないと思うの」一人がそう口にすると、別の女性が思わず言葉を継いだ。「私も、若い頃は好きだったのよ」「言えなかっただけなの」その瞬間、周囲にいた女性たちの表情がわずかに変わった。驚き、照れ、そして「自分も同じだった」という共犯めいた空気。少し離れたテーブルで、相沢は静かにウーロン茶を口に運んでいた。(……やはり、人は変わらない)彼は半世紀前を思い出していた。当時の真壁は、クラスでも特別な存在だった。近寄りがたいほど整った容姿と、誰にも簡単には踏み込ませない静かな距離感。女子たちは憧れを抱きながらも、それを表に出せなかった。「好き」と言えば軽く見られるかもしれない。拒まれたら傷つくかもしれない。周囲に知られたら恥ずかしいかもしれない。そんな理性や世間体が、感情に蓋をしていた。「真壁くん、昔は本当にモテたわよね」誰かが懐かしそうに笑う。真壁はグラスを置き、静かに答えた。「モテていたというより、皆が言わなかっただけじゃないかな」その一言で、会場がふっと静まった。相沢がゆっくりと立ち上がる。「皆さん、少し落ち着きませんか。真壁も困っているでしょう」穏やかな仲裁だった。しかし真壁は、群がる人々の向こうから相沢をまっすぐ見据えた。「相沢。君は昔から変わらないな」「何がだい?」「人は理性だけで生きていると思っているところだよ」空気がわずかに張りつめる。真壁は周囲を見渡した。そこにいるのは、七十年という時間を生き抜いてきた同級生たちだった。家庭を持ち、子を育て、仕事に追われ、親を看取り、そしてようやく自分の人生を振り返る余裕を手に入れた人々。真壁は静かに言った。「皆、僕に『変わらない』と言う。でも、本当に変わっていないのは、僕じゃない」誰も言葉を挟めない。「若い頃は、理性が感情を隠していた。傷つきたくない、笑われたくない、立場を失いたくない――そんな理由でね」彼は小さく微笑む。「でも、年を重ねると分かるんだ。人生は思ったより短い。だから、『好きだった』『会いたかった』『今でも気になる』――そういう気持ちを、もう隠す理由がなくなる」節子が震える声で尋ねた。「……それって、恥ずかしいことなの?」真壁は首を横に振った。「いや。むしろ、とても人間らしいことだと思う」会場に、長い沈黙が落ちた。それは羞恥の沈黙ではなかった。誰もが、自分の胸の奥にしまい込んできた感情を思い出していたのだ。言えなかった言葉。渡せなかった手紙。見送るだけで終わった恋。真壁は続ける。「若さには、可能性がある。でも同時に、失うことへの恐れも大きい。年を重ねると、失うものは減っていく。その代わり、『本当はどう思っていたのか』を隠す必要もなくなっていく」相沢は思わず苦笑した。「つまり、皆が急に大胆になったわけじゃない、と」「そういうことだよ」真壁は穏やかに頷く。「半世紀前から、気持ちはそこにあった。ただ、理性が蓋をしていただけなんだ」その言葉に、女性たちは互いの顔を見合わせた。先ほどまでの競い合うような熱気は、いつの間にか消えていた。代わりに残っていたのは、「あの頃、本当はどう思っていたのか」を静かに見つめ直す空気だった。真壁はグラスをテーブルに置き、出口へ向かって歩き出す。誰も引き止めなかった。ただ、その背中を見送っていた。相沢は最後に、小さく呟く。「……結局、暴かれたのは老いじゃない。半世紀ものあいだ、皆が理性の奥にしまい込んでいた本音だったんだな」真壁は振り返らない。だが、その背中はどこか穏やかだった。同窓会の会場に残されたのは、老いへの嘲笑ではなく、ようやく言葉にできた感情と、その感情を長いあいだ隠し続けてきた人間の業だった。(第35話 完)>※完全オリジナル作品です。二次創作ではありません。#人間の業 #歴史の循環 #心理小説 #綺麗事の裏側この話が気に入ったら、ランキングバナーをポチッと押していただけると励みになります。
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