拐かし (かどわかし) 第十話

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     手初めに、なんとしても吉原妓楼 海老屋に新次郎を泊めないことには苦労して編み出した仕切りもかなわない。 吉原の遊女は四ツ (午前十時頃) に起床し、入浴や食事をしたあと、昼見世の準備にとりかかる。 昼見世が始まる前、孫兵衛は二階にある小春の部屋を訪ねた。 小春は上級遊女の部屋持ちで、八畳ほどの個室を与えられていた。 この個室に平常起居し、客も迎える。 部屋の隅には箪笥が置かれ、たたまれた三つ布団の上に枕がふたつ、並んでおかれていた。 壁には三味線がかかっている。 ちょうど、小春は鏡台に向かって化粧をしているところだった。 孫兵衛はそばにすわった。「どうしたのでおざんすえ、 まごどん、 まじめくさった顔をしいして」「花魁、昼遊びしかしない新次郎さんのことですがね。 どうです、新さんをどうにかして泊めてみませんか」「材木屋の若旦那の新さんでおざんすか」小春はあまり気乗りしないようだった。 新次郎が小春に夢中になっているのは傍から見ても明らかだったが、小春にとっては単なる客のひとりに過ぎない。 遊女として常套手段を用いなければならないのは、時々昼見世に来させる。 そのため惚れているように見せかける。 いまはそれでじゅうぶんのようだった。 孫兵衛は小春の負けん気を煽るような言質をさんざん連ねた。 それでも首を縦に振らないとみるや欲に訴えた。「新さんを泊めれば一両、はずみますがね。 どうです、泊めてみませんか」「なぜ、おまえさんが一両も出しいすえ」「じつは、ある人と賭けをしましてね。 新さんが泊るほうに、あたしは賭けたんですよ」「はは~ん、賭けに勝つと少なくとも三両と見いした。 おまえさん、そのうちからわっちに一両を出すつもりでおざんしょう」「へへ、ばれましたか。 さすが、 花魁、 鋭いや」孫兵衛は頭を掻いた。 鏡台に向かって唇に紅をひいていた小春が振り向いた。「半分の一両二分。 そうすれば、新さんを泊めてみせいぃしょう」「まいったな。 じゃあ、山分けってことで手を打ちましょう」「そりゃそうでおざんす。 新さんにウンと言わせいすのは、わっちでおざんす」 負けん気と欲のふたり連れで、小春もついに新次郎を泊めるために手練手管のかぎりをつくすことを了承した。 次のヤマは、その新次郎自身をその気にさせることだった。 孫兵衛はあおったり、懇願したり、挑発したありと、ありとあらゆることをやった。「神田あたりの客人がいましてね、 夜っぴいて花魁を寝かせなかったそうですよ。 泊ってやっておくんなさい。 小春さんがかわいそうじゃありませんか。 あれほど若旦那に惚れているんですよ。 新さんも度胸がございませんね。 親父どのが怖いのですかい」 まるで喧嘩腰でものを言ういっぽうで、親身になって相談にのったりもした。「世間では泊まるのに苦労する若旦那はたくさんいらっしゃいます。 それなりに嘘をついたり、工夫をしたり…、嘘も方便でしてね。 あっしなども、片棒かつがされるのはしょっちゅうなんですよ」 こうまで言いくるめても、それでも新次郎はなかなか踏ん切りがつかない。「外泊すると、すぐばれる」「なにか外泊する口実を作ればいいのですよ。 成田山に参詣に行くとか」すると、「成田山に参詣すると言えば、きっとうちの丁稚小僧を供に連れて行けと。 こうなるだろうよ」「じゃあ、ちょいと遠い親戚の家に泊まるというのはどうです」「あとで、すぐにばれる」「ふ~む…。 じゃあ、こういうのはどうです。 友達の家に泊まるというのは。 そこはなんといっても友達ですから、ちゃんと口裏を合わせてくれますよ」 しばらく考えたあと、新次郎がようやく思いついた。「あたしは俳句をやっているんだがね。 中秋の名月の夜、句会がある。 宗匠の家に泊まると言えば、親父も疑いはすまい」「それは名案です。 中秋の名月の夜、花魁と寝床で月見をするなんぞは粋じゃぁござんせんか」「そうだな」新次郎は顔をほころばせた。 一晩中、小春といっしょに過ごせることを想像し、いまから心を浮きたたせていた。「その宗匠の家はどこなんですかい」「長谷川町さ。 近すぎるだろうか」「近いといえば近いですが、夜がふけてから帰るとなれば、ちょいと遠いですな。 夜おそくまで宗匠のお相手をしなければならないとか、なんとか、いくらでも口実は作れますぜ」「そうだな。 中秋の名月といえば、もうすぐだ」「へへ、花魁も喜びますよ。 きっと、その夜は若旦那を、一睡もさせませんぜ」「よせよ、馬鹿だな」 新次郎は怒ったが、その顔はゆるんでいた。>
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