由美と美弥子 3097

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Mikiko’s Room
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2020-08-02 06:32:59
「じゃ、早いこと本題に入りましょう。 当然、目的はお金よね。 でもね。 わたし、お金持ちじゃないのよ。 持ち物は、あのマンションだけ。 親が亡くなって、相続した家を処分したお金で買ったの。 古い家だったから、ほとんど土地代だけよ。 マンション買ったら、すっからかん。 あのお店だって、賃貸なの。 だから、もし無理な条件なら……。 降参するしかないわね。 親は死んでしまってる。 一人娘だったから、兄弟姉妹もいない。 結婚は1度したけど、子供は出来なかった。 早い話、天涯孤独の身ってわけ。 だから、わたしのみっともない映像がネットに晒されても……。 迷惑する人はいないってこと。 もちろん、お店は畳まなくちゃならないだろうけど。 あのマンションを売って引っ越せば、なんとか老後は暮らしていけるでしょ。 でもね……。 彼が晒されるのは困るの。 わたしと違って、彼の傘の下で生きてる人は、たくさんいるから。 妻子もあるし、小さな会社だけど社長さんだし。 彼が社会的信用を失ったら……。 たくさんの人に被害が及ぶの。 あの人、ほんとにいい人なのよ。 だから……。 彼の人生だけは、壊したくない。 命と引き換えにしてもよ。 でもね。 わたしも、もういい歳だけど……。 今が一番幸せなの。 もう少し生きてみたいの。 お願いよ。 お金は、なんとかするつもりだけど……。 いっぺんには用意できないわ。 銀行だって、お店の決算書を見れば、とても貸しちゃくれない。 だから、毎月、少しずつ用立てるから」 白髪女性は、脇のベンチに降ろしていたショルダーバッグを、膝の上に抱えあげた。 革紐の付いたファスナーを引き開けた。 中に手を入れ、取り出したのは……。 銀行のATM封筒だった。「取りあえず、20万。 少ないのはわかってます。 でも今は、これが精一杯なの。 これでダメなら……。 さっき言ったとおり、命と引換えってことになるわ」由美と美弥子 3096 <目次> エロ本を拾った話