由美と美弥子 3095

画像0枚
7:37
Mikiko’s Room
9view
2020-07-31 06:10:31
■ 男は、2通目の手紙をしたためた。 手紙と云うより、脅迫状だが。 もちろん、花屋のオーナーである白髪女性と、直接会うためのものだ。 やはり、互いのマンションの居室は避けた方がいいだろうと思った。 向こうに乗りこむのは、あまりにも危険だ。 あの窓辺に映った男が、待機しているかも知れない。 こちらの部屋も、出来れば知られたくはない。 男は散々考えた末、埠頭にあるベンチを指定することにした。 見晴らしが良く、周りは広々と開けている。 誰かが隠れられる物陰などもない。 しかも、そのベンチは、近くの橋の上から丸見えだった。 あらかじめその橋に待機し、オペラグラスであたりを観察することにした。 男は、花屋の定休日を指定した。 運良く、朝から綺麗に晴れた。 そのときを、ずっと待ち続けるのはキツすぎると思った。 なので、少し早めかと思ったが、朝の10時を指定した。 しかし待ちきれなかった。 男は、9時過ぎには橋の上に立っていた。 見下ろすベンチの列には、誰の姿もなかった。 遮るものもなく日差しの照りつける埠頭。 こんなベンチに、平日の朝方から座る者がいるはずもなかった。 埋立地まで架かる橋を、幾度か往復した。 薄くなり始めた頭頂部が熱くなった。 橋の支柱で、海猫が鳴いていた。 腕時計を何度見ただろうか。 時間の経過が、これほど遅く感じたのは初めてだった。 針は、ようやく10時を指そうとしていた。 まだ待たされるのだろうか。 いや。 それどころか、来ない可能性も否定出来ない。 そのときは……。 こんな橋の上に、自分を立たせ続けた罰は大きい。 あの動画を、ネットに晒してやる。 針が、10時を回った。 男は、拳の汗を握りしめた。 そのときだった。 白い日傘が、埠頭に現れた。 もちろん、日傘がひとりで歩いて来るわけはない。 橋の上からは、日傘を差す人物がほとんど見えないのだ。 脚元だけが、わずかに覗いていた。 ワイドパンツと云うのだろうか……。 一見、スカートに見えるが、裾は2つに別れていた。 もちろんそれだけでは、年齢もわからない。 ましてや、あの白髪女性かどうかは判別しようがない。 しかし、日盛りになろうとする埠頭に、1人で現れる用事など、滅多にないはずだ。 そう。 呼び出された以外は。由美と美弥子 3094 <目次> エロ本を拾った話