由美と美弥子 3078

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     夜だった。 試験勉強で火照った頭を冷やすため、ベランダに出た。 柵にもたれ、たくさんの窓から漏れる灯りを眺めていた。 もちろん、最初からそのつもりで出たわけではなかった。 しかし、ふと気づいてしまった。 ここが、完璧に死角になっていることを。 集中するため、部屋の明かりは消してあった。 小さなデスクライトだけだった。 その明かりは、ベランダまでは届かない。 従って、ベランダに立つ由美を、後ろから映し出す光源はない。 街の灯りを眺めている由美は、誰からも見えないだろう。 そう気づいた瞬間、異様な昂奮に襲われた。 頭のほかに、もう一箇所が、突然火照り始めた。 股間だった。 はっきり言えば、性器だ。 さっき、風呂上がりに穿き替えたばかりのショーツが、また汚れてしまう。 最初は、それが言い訳だった。 ショーツを汚さないため。 それには……。 脱がなければならない。 由美はパジャマを着ていた。 ショーツを脱ぐためには、まずパジャマのズボンを脱ぐ必要がある。 もちろん、部屋に戻ってそれをするのがあたりまえだろう。 でもそのときは、あたりまえの気分では無かった。 由美は、立ったままでズボンを下ろした。 サンダルから脚をあげ、ズボンを交互に潜らす。 脱いだズボンは、背後の掃き出し窓から部屋に放った。 そしてショーツが後を追った。 投げる前、股間部を確かめた。 すでに色が変わっていた。 また洗濯だ。 自分のショーツだけは、いつもお風呂で洗濯していた。 洗濯機で、父親のと一緒に洗ってほしくないからとかではない。 股間の染みを、母に見られるのがイヤだったからだ。 今日はもう、お風呂を終えてしまっている。 明日まで放置するより、後で洗面所で洗おうか。 そんなことを思いつつ、ショーツも室内に投げ入れる。 振り向いて、再びベランダ柵にもたれる。 下半身裸で。 強い風は吹いていないのだが、裸の下腹部に夜気を感じた。 誰からの視線も無いはずだ。 しかし、全くないというのも、逆に物足りなく思えた。 由美は、100メートルほど離れた、同じくらいの高さのマンションの窓を眺めた。 もう遅いので、明かりが消えている窓が多かった。 しかし、暗い窓の住人が、すでに眠ってしまっているとは限らない。 由美の脳裏には、ベランダに望遠鏡を設置し、その映像を室内で見ている男が映った。 レンズはもちろん、由美のマンションを捉えている。 リモコンでレンズの角度を調節し、ひとつひとつ窓をパンしていく。由美と美弥子 3077 <目次> 由美と美弥子 3079
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