男女が互いに「いいね」を押し合い、チャットを介して出会うマッチングアプリがあいかわらず人気だ。俺は、それら複数のマッチングアプリで、いいね数ランキング全国1位の座を、何度か獲得したことがある。いいね数1位の男と聞けば、すごいイケメンを想像するかもしれないが、正直、ルックスはそこそこだ。詳細は省くが、サービスが始まったばかりのアプリを狙ってみたり、地方のブスババアに足跡を付けまくってみたり、ちょっとしたテクニックを駆使することで、比較的簡単にランキング上位に食い込めるのだ。そんなわけで、複数の女性からのいいねをもらっては食い散らかしてきたのだが、1年ほど前に始めたあるマッチングアプリで、面白い体験をした。いいね数上位の男女のみが参加できる特別なパーティに招待されたのだ。あれは確か、アプリを始めて一カ月ほど経ったときのこと。いつものようにアプリを開くと、こんなメッセージが届いていた。『いつも○○（アプリ名）をご利用いただきありがとうございます！　滝本さまは、上位20名に当てはまるため、○月○日に開催されるアプリ男女上位20名限定のパーティにご招待いたします』どうやら、アプリ運営側が、利用者の声を聞くことを目的に、ランキング上位の男女に声をかけているようだ。ランキング上位の男女とはいったいどんな奴らなのか。興味が湧いたので参加することに決めた。迎えた当日。会場は都内一等地にある、結婚式の2次会で使われるようなパーティ会場だった。入場時に簡単な自己紹介メッセージを書いてチェキを撮り、シャンパンで乾杯。ゆるやかな会が始まった。ざっと参加者を眺めて驚いたのは、男性会員のブサイク率の高さだった。俺のような30代はほぼ皆無で、ほとんどが20代前半。やはりこの手のアプリは若い男が優位なのかと痛感させられたが、彼らは肌荒れがヒドかったり一重のぼてっとした顔の者もおり、正直イケメンといえる男は20人中3人程度しかいなかった。そのうちの一人に話しかけてみた。「どうも。お兄さんお若いですね。ちなみに、いいね数最高いくつくらいになったんですか？」「千くらいですかね？　楽勝っすよ。たぶん、僕みたいに髪を明るくして、肌も加工して韓国系（韓国のアイドル風）に寄せれば、女の子っていいね付けるんすよねー」　別の男が会話に混ざってきた。「いいね千以上いくと、メッセージ追いきれなくないですか？」「わかるわかる！　あと、アプリの動作が重くなって、すぐ落ちちゃったり！」「ほんと、メッセージ返したくなる女のコって1％もいないっすよね？」「1％ってか0・5％くらいじゃん？　ははは！」こんな感じで、上位ランカーの辛さ（というか自慢）を語り、自分らが、〝選ばれし民〞であることを確認するかのような会話がひたすら続いた。いざ女性参加者に目を向けると、「マッチングアプリ内だけの美女（要するに普通レベルかちょいブス）」も多かったが、参加者の半数を占める10人ほどは、モデル級の超絶美女だった。最初は彼女たちを狙って話しかけ、ライン交換を試みたが、やけに冷たい態度をとられてことごとく撃沈。しかも、二次会の会場にはそれらの美女はほとんど来なかった。これは推測だが、おそらくモデル級の彼女たちは運営側が用意した「仕込み」だったのではないか。それでも、二次会の参加者同士でライングループをつくり、正真正銘のアプリユーザーである上白石萌音似の事務職、24才と意気投合し、後日デートに誘うことに成功した。彼女のような職場に出会いがない女性はアプリを使うしかないとのことだが、マッチングアプリの画面を見せてもらうと、ブサイクな男たちから一日200件以上のいいねが届いており、メッセージはほとんど返していないそうだ。「どうでもいい男からいいねもらっても全然意味なくない？」「そうだね。俺もアプリやめようと思ってるよ」「顔しか見ないでいいねしてる男も多いしー」「あー、こっちも似たようなもんだよ。ヤリモクしかいないのかもね」こんな感じのアプリのネガティブキャンペーンで盛り上がり、この日、上白石ちゃんの持ち帰りに無事成功したのだった。選ばれし者としての貴重な経験をさせてもらったが、男性諸君に言いたいのは、アプリなんてブサイクでもテクニック次第でわりと簡単に食えるということだ。ぜひがんばってみてほしい。