2017.2.4(土)
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2日後。
わたしは、高校に戻った。
薫の家とは違い、毎日通っていた学校は、目新しくはなかった。
すべてが見知った佇まいだ。
しかし、その既視のはずの風景は、「かをる」のころとは、まるで違って見えた。
初めて見るものに対しては、何も感じなかったのだが……。
見知ったものに対しては、違和感を覚えずにはいられなかった。
「かをる」と「薫」の身長差がもたらす錯覚なのだろうか。
「薫」には、こんな風に見えてたんだ。
改めてそんなことを感じた。
しかし、違っていたのは、風景だけではなかった。
自分が受ける視線もだった。
「かをる」のころ、わたしに向けられていた眼差しは……。
悪意、無視、侮蔑。
嫌いな虫を見るような視線だった。
しかし、この日はまったく違った。
好意、執着、崇拝。
視線だけでは無かった。
教室に入ったわたしを、クラス全員が取り囲んだ。
みんなの顔が輝いていた。
涙を流す女性徒までいた。
しかし、わたしの視線は、彼女らの頭越しに見える机に貼り付いていた。
そこは、「かをる」の席だった。
机の上には、花瓶が置かれていた。
萎れた花の花弁が、机に散っている。
やはり、死んだのだ。
「かをる」は。
目の前に突きつけられた事実だった。
もう、帰る場所は無いのだ。
もし、この身体から追い出されたら……。
まさしく、「かをる」は消滅する。
胸前を掻き合わせたいほどの寒気を覚えた。
1日の授業は、何事もなく過ぎた。
ページは少し進んではいたが、「かをる」のころ、予習していた範囲内だった。
教師も気を使って、わたしを当てたりはしなかった。
放課後。
帰ろうと廊下に出たわたしを、担任の女教師が呼び止めた。
わたしの周りには、幾人もの女生徒が群がっていた。
心配だから家まで送ると言って聞かないのだ。
この集団を引き連れて下校することを考え、絶望的な気分になっていたところだった。
2日後。
わたしは、高校に戻った。
薫の家とは違い、毎日通っていた学校は、目新しくはなかった。
すべてが見知った佇まいだ。
しかし、その既視のはずの風景は、「かをる」のころとは、まるで違って見えた。
初めて見るものに対しては、何も感じなかったのだが……。
見知ったものに対しては、違和感を覚えずにはいられなかった。
「かをる」と「薫」の身長差がもたらす錯覚なのだろうか。
「薫」には、こんな風に見えてたんだ。
改めてそんなことを感じた。
しかし、違っていたのは、風景だけではなかった。
自分が受ける視線もだった。
「かをる」のころ、わたしに向けられていた眼差しは……。
悪意、無視、侮蔑。
嫌いな虫を見るような視線だった。
しかし、この日はまったく違った。
好意、執着、崇拝。
視線だけでは無かった。
教室に入ったわたしを、クラス全員が取り囲んだ。
みんなの顔が輝いていた。
涙を流す女性徒までいた。
しかし、わたしの視線は、彼女らの頭越しに見える机に貼り付いていた。
そこは、「かをる」の席だった。
机の上には、花瓶が置かれていた。
萎れた花の花弁が、机に散っている。
やはり、死んだのだ。
「かをる」は。
目の前に突きつけられた事実だった。
もう、帰る場所は無いのだ。
もし、この身体から追い出されたら……。
まさしく、「かをる」は消滅する。
胸前を掻き合わせたいほどの寒気を覚えた。
1日の授業は、何事もなく過ぎた。
ページは少し進んではいたが、「かをる」のころ、予習していた範囲内だった。
教師も気を使って、わたしを当てたりはしなかった。
放課後。
帰ろうと廊下に出たわたしを、担任の女教師が呼び止めた。
わたしの周りには、幾人もの女生徒が群がっていた。
心配だから家まで送ると言って聞かないのだ。
この集団を引き連れて下校することを考え、絶望的な気分になっていたところだった。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2017/02/04 08:00
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立春
待ちに待った節気です。
次は、雨水。
さらにその次は、啓蟄。
わくわくする語が並びますね。
わたしが立春から連想するのは、一つの俳句です。
●立春の米こぼれをり葛西橋
わたしの好きな石田波郷の句です。
この句もそうですが……。
波郷の句は映像が鮮明に見えることが特徴です。
波郷の春の句は、ほんとに魅力的です。
●バスを待ち大路(おおじ)の春をうたがはず
この季節が待ち遠しいです。
●初蝶やわが三十の袖袂(そでたもと)
いいですね。
なお、波郷の句については……。
『Mikikoのひとりごと』の『石田波郷(https://mikikosroom.com/archives/2697999.html)』で書いてます。
興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。
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2. 立春大吉ハーレクイン- 2017/02/04 11:26
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>「かをる」と「薫」
えーと、どっちがどっち、と少し考え込んじゃったよ。
続けて読んでればそんなことないんだろうけど。
担任の女教師
お、出ました!女教師。
この物語(由美美弥自体のことだよ)、何人目の女教師でしょうか。
立春、雨水、啓蟄
で、春分、清明、穀雨……。
春は近いぞ、と(まだまだ、のこったのこった)。
それにしてもこの二十四節気の名称、誰が考えたんだろうね。いずれ中国人でしょうけど。
そういえば、二月は如月ですが「着更着」とも書くそうです。寒いんで重ね着する、ということでしょうか。
おー寒い、立春なのになあ。
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3. Mikiko- 2017/02/04 12:09
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立春を過ぎても……
まだ寒いのは当たり前。
夏で云えば、8月ですから。
立秋が涼しくないのと一緒です。
でも、立春を過ぎると楽しみなことがひとつ。
それは、太平洋側でも、雪が降りやすくなること。
首都圏豪雪を願ってやみません。
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4. 根性無し郎HQ- 2017/02/04 18:14
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>夏で云えば、8月
知らない人が読んだら「こやつ、何を書いておるのだ」でしょう。
>首都圏豪雪を願って……
根性が曲がり切ってますな。
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5. Mikiko- 2017/02/04 18:29
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越後の木々は……
圧雪により、根元が曲がってしまいます。
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6. 花見で一杯HQ- 2017/02/04 21:29
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↑まだ早いか
じゃ、雪見で一杯
圧雪注意報
新潟の県木、ユキツバキの樹形は、まるで地を這うようだとか。
かんけーないけど、高山植物にハイマツ(這い松)というのがあります。樹高はせいぜい人の腰くらいという、いじけた松ですが、日本国中の高山に生育してます。
♪花は越後の
花は越後の 雪椿
ユキツバキの真紅の花は、春を告げる花だとか。